自分はジュエリー職人としてではなく、「ジュエリーの営業マン」としてこの業界に入りました。現場でお客様と向き合いながら、メーカー・卸・小売・ブライダル・ECまで、ジュエリー流通の構造と力関係を数字と肌感覚で理解してきました。
大手ジュエリー企業とも取引する中で、「なぜこれだけの規模と資本がありながら、本気のDXに踏み切れないのか」を間近で見てきました。複雑な下請け構造、既存店舗網とのカニバリ懸念、デジタル人材の不足——その一つひとつが、大手ほど動きにくくなる"構造的なブレーキ"になっています。
遅かれ早かれ、ビジネス界の基本的なものは変わる。
——アンディ・グローブ(インテル元CEO)
この言葉を胸に、自分は営業マンとして現場に立ちながら、「次に来る波」を見極めることに賭けてきました。
1999年、楽天市場に出店。当時はノートPCが重く高価で、注文メールを見るには会社に戻るしかありませんでした。カシオのPDA「カシオペア」にモバイルカードを挿し、外出先で必死にメールを取りに行っていた時代です。「これが電話になって、メールとWebが1台でできればいいのに」と本気で思っていました。
だからこそ、iPhoneが登場したとき、「これは必ず広がる」とすぐにわかりました。ガラケー全盛期に「日本では流行らない」と言われていた空気のなかで、日本発売初日からiPhoneを使い始めたのは、自分がずっと欲しかった未来の形とぴたりと重なったからです。
3Dプリンターでも、同じ経験をしました。1996年当時、1,500万円のプリンターで指輪1個に10時間。いまでは数万円のプリンターでテーブル一面のリングを1時間で出力できます。その時間とコストの"崩壊"を、現場で体験してきました。
生成AIとロボットアームにも、同じパターンを見ています。今はまだ完全ではない部分があっても、能力は指数関数的に伸び、ロボットアームの価格も下がり続ける。だからこそ、「結婚指輪のダイヤ彫留装置」という具体的なテーマで山梨ジュエリー産業DXに取り組み、技術が成熟したときに真っ先に使いこなせるポジションを取りに行っています。
既に動いている「ジュエリーDX基盤」
こうした先読みは、構想だけで終わっていません。
digitaljewelry.salonは、システム会社ではなく、30年ジュエリー現場を経験したジュエリービジネスプロデューサーが、自社のためにゼロから設計したDXプラットフォームです。
この自社開発の受注プラットフォームでは、お客様自身がWebブラウザ上で結婚指輪や婚約指輪を3Dカスタマイズし、そのまま注文できる仕組みを既に稼働させています。顧客マイページでの注文履歴管理、運営側の受注・生産管理ツールまで、フロントからバックエンドまで一気通貫で構築しました。
これは単なるECサイトではありません。「お客様が自分でデザインし、山梨のマイクロファクトリーで職人が仕上げ、青山サロンまたは配送でお届けする」——この流れをデジタルで完結させるための、ジュエリー業界では類を見ないDX基盤です。
生成AIとロボットアームによる自動化は、この既存基盤の上に載せる"次のレイヤー"として開発を進めています。
ロボットアームが実現する「場所を選ばないマイクロファクトリー」
現在開発中の生成AIとロボットアームを活用した「結婚指輪のダイヤ彫留装置」が完成すれば、マイクロファクトリーは山梨だけに留まりません。
熟練職人がいなくても、ロボットアームとdigitaljewelry.salonの受注システムがあれば、設定した場所で結婚指輪の製造が完結する——つまり、「どこにでも置けるジュエリー工場」が実現します。
これは、ジュエリー産業の地理的制約を根本から変えるモデルです。山梨で確立したマイクロファクトリーのノウハウを、国内他拠点、さらには海外へと水平展開できる可能性が開けます。
これを実現するチーム
このビジョンを絵に描いた餅で終わらせないために、実行力のあるチームを組んでいます。
兼安 暁(取締役CDO)
アクセンチュアでキャリアをスタートし、ツタヤオンライン時代にはTポイント事業の立ち上げでシステム開発責任者を務めた人物です。digitaljewelry.salonの設計思想と技術基盤は、この経験に裏打ちされています。
寺内 英之(取締役CFO)
野村證券で30年以上のキャリアを持ち、野村ジャフコインベストメントアジア(シンガポール)時代には31社に投資し、うち21社を上場に導いた実績があります。スペイン・ポルトガル社長も歴任。資金調達と事業成長のプロセスを、投資家側から熟知しています。
古賀 洋一郎(技術顧問)
東京工業大学(現・東京科学大学)卒、日本初のカーボン系3Dプリンティング博士号取得者です。ロボットアームと3Dプリント技術の融合において、学術的裏付けと実装力の両方を担保しています。
ジュエリー業界の現場を知る自分と、大規模システム開発・投資・先端技術研究それぞれのプロフェッショナルが揃うことで、「構想→実装→スケール」の全工程を自社で回せる体制が整っています。
山梨への本社移転——産地の"外側"から"ど真ん中"へ
2024年10月28日、創業の地である東京・豊島区を離れ、ジュエリー産業の集積地である山梨県笛吹市に本社を移しました。
産地の外からDXを語るのではなく、「山梨ジュエリー産業DX推進事業」の当事者として、生成AIとロボットアーム、マイクロファクトリーを組み合わせた新しいモデルを、この土地から世界に向けて発信していくための決断です。
東京・青山のサロンでお客様に最先端の3Dカスタム体験を提供しながら、山梨のマイクロファクトリーで職人と共にジュエリーを生み出す。「地方でつくり、東京で魅せ、デジタルでつなぐ」——その中核にあるのが、山梨への本社移転です。
そして、ロボットアームの完成により、この「山梨モデル」を他の地域へ展開する道筋が見えてきます。
なぜデジタルジュエリー®は大手に真似されないのか
デジタルジュエリー®のビジネスが大手に簡単に真似されないのは、最新の技術を持っているからだけではありません。
営業マンとして培った流通のリアルと、職人・工場・サロン・ECをすべて自分の手で経験してきたからこそ、「技術 × 流通 × 人の心理」を一体で設計できる——そこに、この会社ならではの強みがあります。
さらに、自社開発のDX基盤「digitaljewelry.salon」が既に稼働し、顧客データと受注実績が蓄積され続けている。この「動いているシステム」と「現場の知見」の組み合わせは、資本だけでは一朝一夕に追いつけない参入障壁になっています。
そして、このビジョンを実行に移せるチームがいる。大規模システム開発、ベンチャー投資、先端3D技術——それぞれの領域で実績を持つプロフェッショナルが、同じ方向を向いて動いています。
人手不足と高齢化が進む山梨のジュエリー産地で、職人技を継承しながら、流通構造そのものをアップデートする。生成AIとロボットアームを使った「結婚指輪のダイヤ彫留装置」は、その"次の一手"であり、「場所を選ばないマイクロファクトリー」という新たなスケーラビリティへの入口です。
株式会社デジタルジュエリー
代表取締役CEO 佐藤 善久